世界大戦への切迫した妄想 (小泉秘密外交?)

◇取り急ぎ書いておくと、毎日朝刊3面「クローズアップ」(分析記事)を見ても、小泉純一郎首相と腹心の武部勤自民党幹事長が、16日から21日にかけて(衆参両院の予算委員会答弁、日中党間会談)で、わざわざ「靖国参拝実行、反対するなら内政干渉」と中国側を挑発したのは間違いないだろう。中国側は、04年11月チリ、この4月23日ジャカルタでの首脳会談での約束を反故にされた、小泉政権は日中敵対政策を取っている、という受け止め方らしい。
◇おそらく小泉は、先日の「反日デモ」以降の日本社会の風向きの変化、大きく下落しないどころか時に上昇する支持率を指標に、国民の支持を見込んで、このような行動を取っていると思われる。今回の一件にしても、日本政府周辺に本気で「不快感」を表明し、激怒している人は見当たらない。岡田代表は「中国にネガティブメッセージを送ってきた責任をとれ」と批判していた。しかし、小泉政権周辺は「反日デモ」前後も、白々しく「冷静に」と言い続けたわけで、これらの出来事は小泉政権にとっては正に「想定の範囲内」なのではないか。小泉が靖国問題に対する答弁で言った「大局的見地」とは、こうした読みを背景にした、中国敵視政策への自信かもしれない。福田和也は小泉をバカ扱い*1しているが、少なくともしたたかで、良くも悪くもプロの政治家なのではないか?
◇あとは、この敵対政策を何のために行っているのかという「目標」の問題である。何か情報が欲しい*2朝鮮半島・台湾・ロシア・アメリカ・東南アジアの地政学を抜きにこの問題は語れない。それにしても、今次の世界情勢は「複雑怪奇」。秘密外交の時代に逆戻りして、核終末戦妄想とは違った意味*3での「大戦」に近づいているのだろうか?

*1:いや、そこまでは言っていないかもしれないが。氏は小泉政権を、2002年2月時点で29点、2005年3月時点で27点と採点しているが、小泉について書いた文章には厳しい口調の割にあまり生彩が感じられない。少し遠くの方がよく見えるということか。『総理の値打ち総理の値打ち (文春文庫)

*2:アメリカ80年代からのネオコン帝国化とそれに連動する日本の(本当に切実な!)現代史が、実にありがたいことにこちらに。http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050525/p1

*3:もっとも、NPT=核拡散防止条約の5年ごとの「再検討会議」も、今回は採集文書を採択できず決裂しそうな情勢だが。吉本隆明が語っていた(『「ならずもの国家」異論「ならずもの国家」異論)NPT体制の根本問題が現実のものとして吹き上がってきた。このままでは本当に核拡散を防ぐ世界的な枠組みが無力化する可能性がある(いや、もうしてるのか)。イラン(中東)と、北朝鮮(東アジア)が、今後の世界情勢の「火薬庫」とならないことを切に望む。私は親イラン的な感情もあるが。