「靖国問題」「歴史問題」と国連改革問題 (情報のミスマッチあるいは大衆の操作について)

◇ちょうどコメントをいただいたid:amgunさんの力作とかぶってしまうのだが、本屋で再び高橋哲哉氏の『靖国問題』を手にとって、2ページほど読んだ。はっきり言って、読者というには足らないのはもちろんなのだが、その部分に見えた国際関係の記述だけ見ても、「これは書物というより、プロパガンダ文書だ」というのが、私の素朴な感想である。
◇事実関係を知るためなら、新聞の特集記事(今見つからないが、先月?の『毎日新聞』の記事はよくまとまっていた)でも事足りる。神社「非宗教」説の問題なら、例えば阿満利麿『宗教は国家を超えられるか 近代日本の検証*1でも読んだ方がいいのではないか。安くない金を払って、多くの人がああいう文書を買うのはなぜだろうか? やはりこれも「罪の重い」書物の1つになるのではないか。
◇情報のミスマッチが多過ぎるというのが、このブログを「孫の手」と題した時にも考えたことなのだが、いくら最近の小泉政権がひどいといっても、高橋氏によるこの文書を読むことで何が分かり、何が解決するのか、私には分からない。(高橋氏の発言ではないが、「EXIT 2007:戦争賛美の靖国で「不戦の誓い」ができるわけがない! - livedoor Blog(ブログ)」にある)「霊魂の政治利用」というなら、日本政府も中国政府もどっちもどっちではないか。またその一方で、私は中韓叩きの定型的ウヨウヨ言説の氾濫にも飽き飽きしている。こちらもプロパガンダを繰り返すという意味ではまったく同様だ。
◇折しも、国連改革では新常任理事国選出をめぐって日々情勢が動いている。G4(ブラジル、ドイツ、インド、日本)の安保理改革決議案に対して、フランスは日本に好意的(ITER=国際熱核融合実験炉は日本が譲って、次世代コンコルドは共同開発)で共同提案国になり、イギリスはG4を支持するが共同提案国にはならず、アメリカは日本はいいが他はヤダ(ただしインドには接近)、3日に中国とロシアは反日同盟(おそらく朝鮮半島中央アジア*2でも連携)を組み、中国の油田開発攻勢でアルジェリアなどが中国寄りになりつつあったアフリカ連合AU。53カ国)は4日にG4に近い案で再結束*3イスラエルも国連での地位回復に意欲的…と、日々新聞の見出しを見ているだけで、めまぐるしく合従連衡し、権謀術数飛び交う国際政治。そこに、ハメネイ師&アフマディネジャド強硬体制になったイランがアメリカやイスラエルやアラブ系西アジア諸国に対してどう動くかなどの問題が絡んでくる。
◇さて、「日本か中国か」という思惑が世界中の国々を駆け巡るこうした状況の中で、「私たち」は何をすればよいのか。私もうっかりだまされたり、結果的に操作されていたりするかもしれないが、誰が冷静に事態を見ているのだろうか。とりあえず、目先の現象に惑わされずに、『戦国策』かあるいはせめて『三国志』もので合従連衡を学ぶか、マキャベリの『君主論』で権謀術数の基礎にある統治術の真髄に触れるか、こういった古典でも読んでいた方が一々ブツブツ言うよりは良いのではないか。

*1:宗教は国家を超えられるか 近代日本の検証 (ちくま学芸文庫)この本もちらっと見ただけで、近世人の死生観についてなど非常に問題ある記述(儒者の祭祀論に触れていない)だが。

*2:今日は、中国とカザフスタンの同盟。人民日報も嬉しそうに報じている。→「http://www.people.ne.jp/2005/07/05/jp20050705_51483.html」。(7/7補足:)◆6日朝の毎日新聞によると、一時停滞していた「上海協力機構」が復活。中国&ロシア+カザフスタンウズベキスタンタジキスタンキルギスが参加する反米・強権体制同盟。今回の首脳会議にはインド、パキスタン、そしてイラン!がオブザーバー参加。こりゃ、早くインドとASEANを味方につけないと、アジアで反米同盟が完成し、日本は本当に孤立しかねないね。強権体制の脆さを集団の力でカバーしようとしているイヤーな政権が集まってるわけで、ブッシュ2期目就任演説の「自由の全世界への拡大」やライス国務長官証言の「圧制国家」批判も、案外現実的な問題かもしれない。そういや「悪の枢軸」「ならず者国家」ってのもあったね。◆私の国内政治&世界情勢認識は、専門家でもなんでもないので相当大雑把ですが、5/25「世界大戦への切迫した妄想 (小泉秘密外交?) - ピョートル4世の<孫の手>雑評」、5/27「呉儀ドタキャンの背景と今次の国際情勢 - ピョートル4世の<孫の手>雑評」、6/12「「靖国問題」補足から、「小泉首相」観・国際情勢観の問題へ - ピョートル4世の<孫の手>雑評」あたりの記述を読んでいただけると分かります。たぶん。◆上海協力機構の首脳会談については、とりあえずこんな記事があった。「サーチナ-searchina.net」、「サーチナ-searchina.net」◆私よりきちんと調べる人の、すでに1月前の記述はこちら。「http://naotaka.main.jp/archives/2005/06/post_26.html

*3:これも最終局面で、G4に付くか付かないか相当もめたらしい。