オタク・齋藤孝(教育)・オウム(差別)論など(『創』を手がかりに)

◇前回に続いて、『創』8月号の記事紹介と、それに関連する私の勝手な見解を少々。

◇お題は「"萌え"の経済効果」。「昨年8月の野村総研資料でのオタク市場規模2900億円」「今年4月の横浜銀行発表の『萌え』関連市場888億円」を引きながら、ではその約900億円分はどこから来たかと話は進む。その結論は、「デート文化の衰退」(デートにお金をかけなくなった)。岡田氏「900億円が丸々男女交際から抜けて萌え文化になったということは、セックス文化からオナニー文化へのものすごい変化があるんじゃないか」。東浩紀先生の「動物化」も引き合いに出されているが、とても卑俗でだからこそ分かりやすい理解。
◇そういえば、最近「秋葉原」論を含む単行本を出した鹿島茂氏は、昨日発売の『週刊ポスト』の「著者に訊け!」で、その手の喫茶店のコスチュームは「ノーパンとエプロンの間を振り子のように振れる」という、オタク的ならぬ文化史的な意見を述べていた。

◇お題「齋藤孝教授の教育論」。最近近くの書店で齋藤孝の「教科書」?シリーズが10数点平積みで並んでいたが、千代田区の九段中高一貫校GM就任取り止めと絡んで、その教育観を批判する意見。
◇教育問題を論じだすと切りがなく、私も遥か昔に予告してそのままになっている。そういえば、細木数子ですら今の学校教育の建て直しには悲観的で、勉強するには塾を推奨していた(先週金曜日の『幸せって何だっけ』)。これによっても、いかに悲惨な状態かが分かる(「世の中」に通じた人が言ってるだけに*1)。いっそのこと、教科書検定完全廃止、学校は午前中だけにして、勉強は午後塾でする、くらいの方が今よりはいいか。「孫の手」アンテナの下の、「孫の手」ブックマークに「オタク系教科書」や「フランスの中学卒業免状試験」などの資料を出しておいた。

  • 森達也氏の連載「極私的メディア論」

◇題「またも強引なオウム逮捕」。これに限らず、NHK問題・「戦争」について、コンパクトに語る。なお、オウム真理教関係では、編集部記事で元教祖三女の和光大学による入学拒否問題での法廷記録も載っている。これについてはむしろ、『インパクション』143号(04.9)の特集「ヘイト/フォビアの構図」中の、上野俊哉の「トレランス−和光大学「入学拒否」問題について」が詳しく、大学の経営問題も含めた広がりのある射程でこの問題を語っていた(これは特に良い)。
◇この他、林眞須美獄中手記も載っている。これも私は内容については判断しかねるが、大手メディアへのアンチテーゼとしての価値は認める。
◇なお、当ブログでもこういう問題を取り上げると「靖国問題」などに比べて遥かに反応が悪いのだが、これを党派的「人権」運動とごっちゃにされては困る。至極具体的な問題であり、ここにわざわざ挙げた記事も党派性より事柄の細部を知らせてくれるものを主に取り上げた。こういう言論ないし文芸から撤退するなら、党派ならぬ日本の「リベラリズム」が存立しえないのだけは間違いない。
◇ところで、こういう情報への反応が悪いのは当然だろうか? 私はあるギリギリの意味で、つまりあえて無責任に言えば、こういうのこそ「面白い」と思うのだが。だっていかにも「世間」のことがあからさまに分かるではないか。人間の「痛み」「苦しみ」を過度に重く考えすぎて、触れず触らず、見て見ぬふりをするよりいいのではないか。
その意味で、たびたび引き合いに出し、なおかつ今のところかなり中傷めいているが、私は北田暁大氏の『嗤う日本の「ナショナリズム」』の方が、本当に無責任な議論ではないかと疑っている。私はこれから東論に続いてきちんと書かなければならないが、誰かこの本の意義なり、重要性なりが分かる人がいたらぜひ反論して欲しい。

*1:なお、私も昨日知ったのだが、細木数子の『週刊大衆』(!!←例によってコンビニで隔離されてます)の連載「叱ってあげる」も面白そうだ。補足:今日の『ズバリ言うわよ!』では、浴衣の着付けをやっていて「細木流」なんてタイトルだったが、実に正統で、まっとうで、普通の着付けだった。あれくらいできないと困るんじゃない?