【2:小泉「劇場」政治と「政治の2001年体制」】

◇今回の解散総選挙劇の序盤では、「郵政反対議員vs刺客候補」なる図式に注目が集まった。小泉首相政権運営は「独裁的」と批判されることも多い。それらは小泉首相の特異なキャラクター(「非情」「変人以上」)に還元されやすいわけだが、これは本当にそういう類の問題だろうか。
解散総選挙の動きを予想しつつ執筆された、竹中治堅氏論文*1によると、これらの動向の特徴は「政治の2001年体制」という枠組みからすれば、当然といえば当然のものである。氏によれば、90年代の政治改革の結果、現在の政治体制は1955年体制から「2001年体制」というべきものに大きく変化している。図式化して比較すれば以下の通りの違いがある(私の蛇足あり)*2

1955年体制
中選挙区制=自民候補者同士の争い=派閥中心の選挙
②首相=派閥の領袖 →党内基盤=権力基盤
③大蔵省中心の行政機構(+族議員
参議院=「衆議院カーボンコピー

2001年体制
小選挙区比例代表並立制=党首の公認権、政党交付金配分権(脱派閥)←94年政治改革
②首相=与党の「選挙の顔」 →世論の支持=権力基盤(ポピュリズム、人気取り政策)
③首相の行政権限強化=内閣官房内閣府経済財政諮問会議など←2001年省庁再編
参議院=1989年以来の自民党過半数割れ(連立工作の舞台→参議院議員の発言力増)

小泉首相の「劇場政治」は、もちろんキャラクター的要素も欠かせないが、これらの制度に支えられて可能になったものである。このような制度によって、選挙そのものが政党中心のものになってきていなければ、小泉政権もありえなかった。
◇一方で、まだ日本の政党は「政党内での政策合意」のプロセスが非常に弱いこともはっきりした(与野党問わず党内がバラバラ*3)これでは政権選択のしようがない。まずどの党にも党内改革が必要だということがはっきりしたというのが今回の選挙ではないか。
◇また、このシステムの特徴によって、外交は一時的人気取りを主眼とするため一定せず(拉致問題靖国参拝安保理常任国入りなど)、また、国民に直接負担を求める社会保障制度改革などの重要政策は後回しとなっている。
◇また、仮に政権交代が起きたとしても、このシステムは同じ。イラク撤兵や年金改革を世論の十分な支持を取り付けて本当に実行できるのかが政権与党の課題になるだろう。

*1:この節はほとんど、『中央公論』9月号(8/10発売)掲載の、竹中治堅(1971生、比較政治学・日本政治論)「小泉以後の三条件 世論・改革・参議院の重さ」の論旨を要約したもの。ちなみに『中央公論』のこの号は、「特集 戦争責任、60年目の決着」を始めとして相当な充実度だった。

*2:なお、昨日付『読売新聞』の編集委員・浅海伸夫氏「政思万考」も、選挙前後の郵政政局に絡んで「参議院の位置づけ」問題に触れている

*3:一方で、選挙演説では判を押したような党政策の繰り返しや定型化した他党攻撃が多く、候補者本人の考えが語られていないという批判もあるわけだが。