【7】北原幸男指揮NHK交響楽団★★★★☆

1992年3月25日ライブ(NHKホール)
コッホシュヴァン1993年(313272)
66:42(17:14/20:26/13:42/15:27)
(画像なし)
◇圧倒的に聴き慣れているのと思い入れが強いので、いまさら客観的に評価するのは難しいが、今回の聴き直しの後もやはり私の中の標準のままである。N響の音はベースの音色・音量は地味っぽいが、この曲の演奏としては弦楽・木管金管とも冷え切った感じを出しており、北原の禁欲的な解釈に寄り添って実に繊細な美しさを湛えている。私の思い入れを割り引いても、特に解釈上は独自の価値があるだろう。
1.祈りの場面がやはり美しい、ラッパのシグナルも決して強くないが、よく伸びる。制圧シーンもことさら荒くも強くもないが、冷徹に追い込んでいくところが、怖い。そう、怖い演奏という点で、ダスビですら及ばない鬼気迫るものを持っている。途中から2段階で加速していく辺りが強い慟哭を呼ぶ。全く他には見られない、決定的な解釈である。
2.低弦のピツィカートが弱くかつ重い。チャイコフスキー的な嘆きの表情がある。これも好きだ(この曲では第4楽章にもチャイコフスキー的な歌い回しが出現する)。
3.出だしは、金管・打楽器は軽いのだが、低弦が妙にゴリゴリ鳴っている。「ズズンバシバシ」も思ったよりしっかり決まっている。
4.銅鑼が鋭くバシーッと鳴って、冷気のテーマが入ってくるが、止まりそうに遅く静か。木管もしっかり語っている。クライマックスで弦が思いの外歌っている。録音は全体に遠めに感じるのだが、銅鑼の響き方は超録音並みにしっかりしている。鐘はやや響きが短い。残響はほぼなし。