方法1「交響曲から聴かない」
◇「交響曲全集」と題されているが、交響曲から聴くべきではない。OLYMPIAの全集リリースもこの点で失敗している。せっかく親しみやすい管弦楽曲が録音されているのだから、それを入門として聴くべきだ。ミャスコフスキーは、後で述べるように、特に交響曲で親しみにくい禁欲的な作風を貫いている。それに対して、管弦楽曲はより一般的な作風で書かれているので、わざわざいきなり交響曲を聴く理由はない。
◇ミャスコフスキー入門として最適な管弦楽曲は、以下のものではないか。まず、CD14・15のOp32の連作(室内管弦楽のためのセレナード、弦楽のためのシンフォニエッタ、フルート・クラリネット・ホルン・ファゴット・ハープと弦楽のための叙情小協奏曲。1928-29)★★。これは、マルティヌーの一連の協奏曲作品と近い、戦間期の新古典主義的で明快な作風の多楽章の小品(各15〜25分)。ロシア音楽の魅力の1つの要素として、独特の可愛さ(チャイコフスキーのバレエ音楽にあるような)があると思うが、この小曲集も本当に可愛らしい。もっともそういう軽い作風なので、私が愛聴していた1993年のサモイロフ盤(OLYMPIA OCD528)の演奏の方がさらに親しみやすい。
◇単品なら、祝典序曲Op48(1939)★(誤植でOp4と表記されている。)が、風格があって美しい充実作。ここではスヴェトラーノフのたっぷりした歌い口が実に魅力的だ。また、個人的には、スラヴ狂詩曲Op71(1946)★★が傑作だと思う。単純なテーマを綿々と展開する中にロシア情緒が横溢していて、珍しく鉄琴・木琴やピアノが色調を添えることもあり、すべてのロシア音楽ファンに薦めたい。終結のダンダラダダ、ダンダラダダ、ダンダンダンダーンの変な盛り上がり方が、スヴェトラーノフにぴったり。こういう新ロマン主義的な作風は、ボリス・チャイコフスキーに引き継がれているような気がする。
◇その他、初期の交響詩「沈黙」Op9(1909-10)★や交響詩「アラスター」Op14(1912-13)★の両作も、前者はリャードフの「黙示録から」やスクリャービンを思わせ、後者はチャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」を思い起こさせる力作だと思う(安定したロマン派的作風で、暗い曲だが聴きやすい)。