方法4「傑作から聴く」

◇単純に言って、チャイコフスキーを第5番か第6番から、ショスタコーヴィチを第5番から聴くように、傑作から聴くのがいいだろう。まずは第5番か第27番を聴きたい。
第5番二長調Op18(1918)★★★は、ミャスコフスキー出世作で、初期の傑作。第1楽章がAllegretto amabileで、交響的アレグロではなく田園的に始まるのが面白いが、その中に全曲を貫くテーゼが現れる。実に堂々としたフィナーレまで全編充実した、「第5番」の番号に恥じない名交響曲である。この曲では、第1番にカップリングされていたロジェストヴェンスキーの演奏は、勢いはあるが曲を無理矢理短縮したような演奏で、スヴェトラーノフ雄大な解釈が優れている。
◇ちなみに、第5番は作曲者としては、内面的に充実した第4番ホ短調Op17(1918)★★を書き上げた後に、息抜きとして書いたといわれる。この関係は、シベリウスの第4番・第5番とよく似ている。第5番の雄大なテーゼに痺れて何回か聴き込んだ後には、渋い名曲である第4番を聴いてみるのもいいだろう。
第27番ハ短調Op85(1949)★★★は、いわずとしれた最後の交響曲で、ミャスコフスキーが再び純化されたチャイコフスキー的世界に還っていったことを示す名曲。第1楽章は、新ロマン主義的な「悲愴」を思わせる。第2楽章は、本当にシンプルなチャイコフスキー的なメロディーが綿々と(ブルックナー的に)展開されていく純度の高い楽章(スヴェトラーノフのアカデミー響とのアダージョ盤にも収録されていた。TRITON DICC-26047など。)。第3楽章のフィナーレのロシア的性格とともに、ミャスコフスキーの特質をすべて含んだ名曲である。
和?Adagio
◇ただし、この全集でもalto盤でも第27番はロシア連邦時代の録音(1991-1993)として扱われているが、私が持っている1987年リリースの古いOLYMPIA盤(OCD158)と同じ録音(年次不詳。音質や楽器配置は1970年録音の第22番とよく似ている。)だと思われる。マイクが音に近すぎる感じの録音(冒頭のファゴットがホール全体に強奏で響き渡っているように聞こえる)で、妙な生々しさと空間の広がりがあるが、必ずしも良質とは言えない。90年代録音が極めてクリアで音量を上げて聴くべきなのに対して、第27番は音量を絞って聴いた方がいい。
(「ディスク紹介」http://homepage3.nifty.com/svetlanov/disc-l-m.htmに出ているZYX盤と同じ音源であれば、1980年の録音ということになる。)
◇この録音の難点が気になる場合は、2002年リリースのポリャンスキー盤(CHANDOS CHAN10025)を入手しておいて損はない。演奏はスヴェトラーノフのよりも冷たくて明晰な感じだろうか。ただ、録音がいま一つなのを差し引いてもスヴェトラーノフの純度の高い演奏はすこぶる感動的だ。
Sym 27/Con Vc/Orch
◇もう1曲、中期から選んで加えるなら、第15番ニ短調Op38(1935)★★だろうか。構成がはっきりとしていて、グラズノフの良質な部分との共通性を感じる。終楽章のちょっとマーラー的な展開も聴き応えがある。この曲には、1994年リリースのコンドラシン盤(AUDIOPHILE APL101.503)もあり、こちらも切れ味の鋭さと風格が両立した非常に優れた演奏だった。
Shostakovich: Symphony No.5 / Miaskovsky: Symphony No.15