【2】 民主党は本当に300議席に達するか?

静かな「変革の夏」?

◇今回選挙が果たして2005年郵政選挙と同レベルないしそれを上回る劇的な結果をもたらすのかどうか。肌で感じる熱気や報道の加熱ぶりといった表面の現象では、前回に全く及ばないといっていいだろう。
◇しかし、その一方で繰り返し引き伸ばされてきた解散時期、小泉改革以後に顕在化した社会の底抜け状況(問題そのものすでに90年代前半に始まっていたというのが、小泉政権を支持した私の見解である)から、国民の選挙への関心は高く、40日の準備期間の間に投票先を決定している度合いが高い。これは各社調査ではっきりしている。
◇その意味では、麻生自民党の間延び(引き延ばし)戦略は裏目に出て、「日本のこれからを考える夏」の結果、自民党が惨敗する結果になりそうだとは言える。
◇実際、解散後の世相は、日食から天候不順(豪雨・日照不足)や芸能スキャンダル(押尾学酒井法子の薬物汚染や大原麗子孤独死)、新型インフルエンザの流行開始など落ち着かないものだが、「考える夏」の趨勢そのものは変わっていないように感じられる。

自民党の自滅傾向?

(以下の論評は、現時点での情勢への感想について、私個人の判断・見解に基づいて記述したものであり、偏った視点が含まれていると自認するものの、特定の投票行動を促すものではない。念のため)
◇また、麻生総理(思わず「」を付けたくなってしまうが)の「民主党批判」は、就任当初からはなはだ印象が悪いが、特に鹿児島の党旗問題では、麻生氏自身が「国民の分断を煽ろうとするかのように」顔を歪めて批判しているのは、はっきり言って醜悪であった(…と個人的には判断する)。
民主党マニフェスト見直しなどに際しては、「ブレた」という批判を投げかけていたが、「いったんそうと決めたのに、周囲の圧力に屈して実行できなかった」という事例を自身が何度となく繰り返して批判された言葉を、実行前の現実的な方針変更に際して使用する神経を疑わざるをえない。恥ずかしい、という自己認識を持たないのだろうか(…と個人的には疑問を持つ)。
◇加えて、あまり大きくは報道されていないが、以下のような「新自由主義」的な「失言」(確信犯的だが)が、麻生氏また舛添厚生大臣によって繰り返されているようである(…というのが、個人的には気に障る)。

麻生首相>学生集会で「金がねえなら結婚しない方がいい」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090824-00000049-mai-pol
麻生首相:まず陳謝を失念 愛知・岡崎で演説
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090827k0000m010011000c.html
舛添厚労相新型インフルは国民の慢心」
http://www.asahi.com/national/update/0819/TKY200908190167.html
舛添厚労相「大事な税金を働く能力があるのに怠けている連中に払う気はない」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090825dde041040013000c.html

◇結婚の問題については、私も職場の先輩から「自分が仕事で独り立ちできるようになって、初めて結婚に踏み切れた(本当に好きでも結婚できなかった女性もいた)」ということを、やんわりとたしなめられたことがあり、結婚に際して経済面をしっかり考えろというのは一般的には正しいことなのだが、現在の社会状況は、「そんなことを言っていると、30代半ばになっても男性の半数近くが結婚できない(その後の見込みも非常に厳しい)」というところに問題があるわけである。
◇また、前回のエントリを挙げると、2日も経たずコメントが付いた(「民主+支持」で検索されたものらしい)。「若い世代に未来を下さい」と題して、言葉遣いは丁重だったし、本来反論に応対するのを厭うべきではないが、民主党の政策についての陰謀論的風説が含まれていたので、一読してまもなく削除させていただいた。
自称「保守」の人間の思考・行動様式が最も左翼的になってしまっている、というのは、櫻田淳氏が繰り返し指摘しているところであるが、某所(2ちゃんねる)で見かけた「自民党ネトウヨが応援していると思ったら、いつのまにか自民党ネトウヨだった」というのが、デタラメと言いきれないのが悲しいところである。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090820dde018010054000c.html
◇雪斎氏が問題にしているが、自民党の再起について心配されるのも当然かもしれない。情勢調査どおりの結果なら、派閥領袖、さらにはつい昔日の総裁候補ですら落選の瀬戸際にいる(さすがに、現職首相の落選はないようだが)。ほぼ確実に当選してきそうなのは、鳥取1区の石破茂農水相ほか数名くらいであり、解党的出直しを迫られる状況である。
再起のための「基礎体力」: 雪斎の随想録

情勢変化はあるのか?

◇新聞各紙の終盤情勢報道でも民主党優勢の流れは変わらないと出ている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090825-00000503-san-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090828-00000029-yom-pol
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090828k0000m010090000c.html
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090828k0000m010127000c.html
ただし、「200選挙区の序盤情勢と終盤情勢を比べると、〈1〉当選有力と当落線上で優位に立っている候補の合計は民主、自民両党ともに、ほとんど変化がなかった〈2〉複数の候補が当落線上で争う接戦区が、53から67に増えた――ことがわかった。」(上記の読売新聞記事)とあるように、自民党に一定程度の巻き返しがあることは間違いない。
◇一方、今週発売の週刊誌記事では、多くが絶対安定多数269議席前後を予想。新聞各紙の大規模調査より慎重な見方という逆転現象がある。中でも『サンデー毎日』が、最も慎重な民主党249議席予想。木走氏も、この予測を材料にして獲得議席投票率でどのように変動するかを詳しく論じている。一方で、ブックマークのコメントに見られるように、意図的に慎重な見方を示して民主党寄りの投票を呼び起こして、毎日本紙とバランスを取っている感がなくもない。
全選挙区を投票率による変動予測をふまえて徹底検証してみる - 木走日記
◇ただ、記事中で、新聞各紙の情勢調査による「300議席予想」は「投票率70%超」を前提しているという部分は、注意すべきだろう。前回、優勢選挙の投票率が67.51%であり、先に触れた「静けさ」でこれを上回るのか、という気もする。当日の天気や「民主大勝」のアナウンス効果によっても、投票率は数%変化し、その結果で接線区の結果が変化していく(木走氏の想定では、投票率1%=10議席)。ただし、昨日までの期日前投票結果は、前回の1.6倍、1100万人近くに達しており、すでに投票率10.5%なので、投票率郵政選挙超え≒選挙結果の郵政選挙超えもありうるのかもしれない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090829-00000067-yom-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090829-00000084-jij-pol
◇さらに、今回は民主党小選挙区で圧勝することによる比例候補者不足により、自民党などの小選挙区落選者に復活が多数出る可能性がある。某所では、こうした情勢を受けて、候補不足分が与党側に流れないように「戦略投票」が議論されたりもしている。まだ2007年参院選の埼玉選挙区定数3に民主党2名当選をさせたようなケースは、戦略投票としてまだ分かりやすいが、小選挙区・比例重複でとなるとややこしい。
◇ごく個人的な感覚としては、やはり多少の揺り戻しがあって、投票率69%程度、民主270〜280議席、自民140〜150議席程度になるのではないかと予測する。これを上回るならば、郵政選挙以上のマグマが動いたということになるのだろう。