ついに出た! 現代邦楽の新譜!
◇いきなりクラシックから外れとるがな!という突っ込みもこないほどマイナーなネタで、最初から客が引きそうだ。「現代邦楽」というジャンルをわざわざ聴く人は日本にどれくらいいるのか? 演奏者より少ないかもしれない(失礼)
◇最近でこそ、廉価盤のNAXOSが「日本作曲家選輯」*1を継続的にリリースして、ようやく日本の「現代音楽」の作曲家の作品を気軽に聞くことができるようになった。
◇現代音楽にも、武満徹のノヴェンバー・ステップスのように、邦楽器を使用した作品はあったが、それとは別に、邦楽の側からの現代作品が作られ、演奏されてきた。例によって不勉強なので、詳しい歴史は知らないが、私がこのジャンルを知ったのは、大学時代の隣りの部室が「三曲(琴・三味線・尺八の合奏)研究会」だった縁で、私が密かに「日本のバルトーク」と呼ぶ、杵屋正邦の作品に触れたのが始まりだった。その後は、極々時たまNHKのETVなどで取り上げられるのを聴くのが関の山だった。
◇今回(4月6日)、キング、コロンビア、ビクター、日本クラウン各社が協力して、「日本音楽の巨匠」シリーズ(25点)が発売された(今までも録音・発売はされていたわけなのだが、これだけまとまったのは画期的だろう)。カタログ・パンフとタワーレコード渋谷店現代コーナーで3点試聴した限りでは、古典ものが多いにしても、近年の安っぽい企画録音とは全く違ったレベルの「音楽」(「純邦楽」?)が聴けそうだ(今回調べたら90年代からかなりの点数出ていたようだが、少なくとも目立たなかった)。とりあえず、発売品目一覧はこちら。http://www.crownrecord.co.jp/kyosho.htm
◇試聴した範囲で自信をもってお勧めできるのは、まず「現代筝曲/沢井忠夫」。演奏者も不世出の天才だそうだが、松村貞三・杵屋正邦などの現代邦楽作品が聴けるのが貴重。また、「三絃/西潟昭子」も三枝成彰・松平頼暁・池辺晋一郎などの作品が聴ける。演奏家も杵屋正邦門下だそうだ。あと、録音は少し古く、作品としては他に比べると一流かは疑問だが、「山田流筝曲/中能島欣一」(自作自演)も面白そう。まだ私は聴いていないが、ノヴェンバー・ステップス演奏で著名な演奏者による「竹韻〜横山勝也・尺八の世界」にも杵屋正邦作品が含まれる。私もまだ買ってないのだが、夢の?杵屋正邦作品集が聴ける日を楽しみにしたい。
◇なお、カタログ・パンフも頑張っていて、坂本龍一「これは快挙だと思う」、デーモン小暮「グハハハハハハハ…我輩が『現代娯楽に適応する伝統の美』その新機軸を追求し早や15余年」(日本古典芸能発破役が、今やこの人?の全活動の中心とも言えるくらいだそうだ)、山下洋輔「あ、こんなに面白いことをやっていたんだ」、喜多郎「僕がやっているシンセサイザー音楽の世界と共通するものを感じます」と大絶賛。さて、新しい流れは起きたか?
◇ちなみに、邦楽演奏家のCDをAmazonで検索した場合も、「邦楽使用の現代音楽」は「クラシック」扱い、「古典・現代邦楽(純邦楽)」は「ポピュラー音楽」扱いで、非常に不便である。この間違ったジャンル分断状況を突破したい。クラシックを聴く人たちよ、ぜひ「現代邦楽」「純邦楽」にも理解を願いたい。*2