三浦雅士「小林秀雄は批評家ではない。編集者である」

「この人・この3冊:編集者としての小林秀雄」 from『毎日新聞』本日9面

◇刺激的な冒頭の一文に続けて言う、「批評の方法については怪しいものだが、編集については、方法といい業績といい第一級である」と。高校時代、教科書に載っていた小林秀雄の悪文に頭痛がし、大学時代、「あんなのはインチキだ」と言って怒っていた恩師を持つ私にとっては、「よくぞ言ってくれました」の一言。もちろん編集者としての業績をもっと見ろということであり、「編集者論」にもなっているわけだが。
◇ちなみに、編集者・小林秀雄の業績として挙げられている「3冊」は、以下の通り。

柳田国男『昔話と文学』
小林秀雄自身、(編集者・小林を信頼していた柳田に)大きな影響を受けた。晩年の講演を読めば分かる。柳田国男を本格的に論じようとしなかったことが、批評家としての限界だった」
大岡昇平『俘虜記』
「編集者としての技量は大岡昇平に『俘虜記』を書かせたことに端的に示されている。書くべきものを書かせたのである」
中原中也『在りし日の歌』
「編集者としての小林秀雄の代表作」「小林秀雄の『モオツアルト』は中原中也追悼にほかならない。…中原中也もまた小林秀雄に対して見事な編集者を演じたのである」

◇原文は非常に小さいコラム(中身は事実関係だけでも上記以上に相当濃い)。なお、MSN毎日interactiveには載っていないようだ。