7.29参議院選挙に想うこと(後半を掲載)

◇丸々1ヵ月近くかかって、ようやっと最後まで書いた。時間がなくて、情報を整理できず、だらだらと長くなってしまったのは残念。
◇後半の3節も、7/18のエントリに続けて掲載したので、古い日記扱いを避けるべく、リンクを載せておきたい。

◇あまりに全文が長過ぎて、誰も最後まで読まないような気がするので、自分でダイジェストしてみる(また余計か)。

【4:参議院の位置づけ問題】

◇このように、今回の選挙以前の問題として、参議院の位置づけをどう設計しなおすかという問題がある。飯尾潤氏は、参議院衆議院とは別の分野の権限を与えることを提案している。行政監視機能の強化(例えば、社会保険庁の問題を発見できるような)、憲法改正の発議権や最高裁判事または長官の任命権を参議院に与えるなど*1
◇私は以前、ワンパターンな「参議院選挙の一票の格差」報道に対して、そもそも参議院議員には、衆議院とは違う地方代表という意味を持たせて、例えば機械的に各県2名の議員定数を割り当てたらどうか、ということを書いた*2
◇確かにテクニカルな問題かもしれないが、そうした議論が表に出ないのは政治状況としては寂しい限りで、実に選挙の盛り上がりとは裏腹である*3

【5:世論調査と選挙結果―「アナウンス効果」はどれだけあるか】

◇こうした情勢調査そのものに「アナウンス効果」があり、実際の投票日には「逆バネ」「揺り戻し」があると言われている。例えば、98年以降の選挙についての予測と結果をまとめた『中日新聞』のこの記事*4に触れられているように。
◇各種調査でも投票態度未定が3〜4割前後あるのが普通である。政党自身も、公示日以降投票日までの時間効果を懸念して、引き締めを図っている*5。故・渡辺美智男氏は「火事は最初の5分、選挙は最後の5分」と言っていたとか(今週の『SPA!』の福田和也坪内祐三「これでいいのだ!」による)。

◇なお、投票の際の基礎的事項に属するが、参議院選比例区投票では2001年から非拘束名簿方式が採用されたため、衆議院選挙とは違い、候補者名での投票ができる。導入時に議論のあったもの*6だが、比例区の名簿を見ると、組織代表が多く、はっきり言ってあまり魅力的な候補者が並んでいるとは言いがたいので、個人名での投票を有効に使用すべきではないかと思われる*7
◇また、『毎日新聞』の新しい試みとして、「毎日ボートマッチ えらぼーと」がある。21問に答えると、その回答と各政党候補者の平均的回答がどれだけ近いかを判定してくれる。
◇私は3回試して、最後に重要度をどこに置くかの重み付けで結果がぶれる印象があるが、2回目で自民候補者と44%一致、民主候補者と40%一致だった。核武装集団的自衛権、また靖国参拝などで保守的な見解を持っているせいか。しかし、道徳教育や年金の方式(税か保険料か)など迷うところを変えてみると、自民41%、民主45%一致に逆転した。
◇いろいろ迷うだけでも、自分の方向性を知る一助になるし、投票先を検討するのに有益だろう。比例区候補者のアンケート結果との一致を確認できるので、候補者への投票を検討するには、有力な素材だと言えるだろう。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/votematch/

【6:久間章生防衛大臣「原爆容認発言」を改めて弁護する】

◇単純にこの部分を読めば、アメリカによる原爆投下は、「国際情勢、戦後の占領状態などからすると」という条件付きで「しょうがない」と言われる。その「国際情勢・占領状態」とは、発言の前後で触れられている、戦争末期のソ連による参戦と北海道占領(南北日本の分割占領=国家分断)の可能性と、戦後の吉田茂による自由主義陣営への帰属の選択、といった事態を指しているだろう。
アメリカの原爆投下の決定には、当然道義的な疑問は残るが、こうした背景からすれば、仮に原爆投下がなかったとしてもまた別種の悲劇がありえた。そうした場合に、「あれで戦争が終わった」(別種の悲劇は起こらなかった)、感情としては原爆の悲惨さに打たれるが、「頭の整理」としては現在の同盟関係に至っているアメリカを「恨むつもりはない」、と言われている。

◇なお、【5】の「揺り戻し」観測(「自民・安倍政権逆風とは言われているが、実際はそんなに負けないんじゃねーの」)については、同日発売の『週刊新潮』記事とかなりかぶっていた。
◇また、【4】参議院の位置づけに関連しては、「参院選、あす投開票 大敗のたびに景気失速 参院、やっぱりいらない?」なる記事を見かけた*8
麻生太郎氏の各地の演説でも、「自民が負ければ株価が下がる」的発言を繰り返しているらしいが、アメリカが抱える「サブプライムローン不良債権」爆弾に比べれば、自民党でも民主党でも大して変わらないのではないか。もちろん「選挙後の政治」いかんではあるが。

*1:やや別の観点を含むが、村上正邦氏の見解が「http://www.miyadai.com/index.php?itemid=526」に出ている。

*2:「紋切り型ニュース」の馬鹿馬鹿しさ(「履修不足」と「参院1票の格差」を事例として) - ピョートル4世の<孫の手>雑評

*3:また、雪斎こと桜田淳氏は、今回の選挙を受けて与党が参議院選挙の選挙制度改革を行う可能性について触れている。あまりに強硬策過ぎるとは思うが。「梅雨時の三題・続: 雪斎の随想録

*4:「『奇跡』望み薄 与党過半数割れ予測大勢」「http://www.chunichi.co.jp/article/feature/saninsen07/all/CK2007072402035350.html」。

*5:例えば、7/17のこの記事などは逆に意図的にアナウンス効果を狙って出されているように思う。「民主、目標「55」に厳しい認識 情勢分析で小沢代表」「asahi.com:民主、目標「55」に厳しい認識 情勢分析で小沢代表 - 朝日新聞 2007参院選:ニュース

*6:非拘束名簿式 - Wikipedia

*7:比例区の情勢は、「【2007参院選比例代表の情勢 自民過去最低14議席割れも」「http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070724-00000087-san-pol&kz=pol」など。

*8:http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200707280022a.nwc」。元ネタはこちららしい。「産経ニュース」。